大菩薩峠旅行記 2017.07.16


海抜1897mとあります。
近場の、大山、高尾山、御岳山、と登って見ましたがそれらの中で一番高い標高です。

この日の天気予報は、曇り、晴れ、ところにより一時雨、とややこしかったが、夜明けとともに起床。
横浜線に乗り、八王子始発の中央線に乗り継ぎ、6時35分発6両編成の電車は始発から満員で驚いたが多くは大月で富士急行に乗る、富士登山客であった。甲斐大和駅で下車、あらかじめバスの時間は調べて8時10分となっていたが、駅から出た所で待ち構えていたバスに行先も確かめずにどんどん案内されて、奥から詰めて補助席を出して全員着席となったところで出発した。7時45分であった。上日川峠まで40分少々、立ち席なしの理由はバスの進行は大変な山道を手慣れた運転でそれなりの猛スピードで走ったので、安全のためだと推察した。乗り物酔いの人は、たぶん少し気分が悪くなるかもしれません。
余談ですが、バスに乗り込むところで警察の者から「情報求む」の捜索人手配のビラが渡されました。十日ほど前に秩父山系飛龍山方面に登山したまま行方不明となっている中年の女性の方の捜索手配でした。無事に戻って来られたのでしょうか。




先を急いで乗り込んだので、このどてっ腹の案内が目に入らぬのです。小型のマイクロバスのような気がしましたが満席で50人ほども乗れたでしょうか。路線バスですがほとんどが終点までのお客ばかりでした。

大菩薩峠ロッジ長兵衛
どの案内にも載っている登山口のロッジ長兵衛です。
持参した飲み物はまだ十分あるのでとりあえず素通りして先に進みました。

大菩薩峠案内図


バスを降りて登山の前にまずはトイレを済ませます。バス料金はちょうど1000円、運転手さんは競艇場の予想屋のように無造作に札束を掌に重ねて受け取っていました。


上の標識を見ていたので、一瞬、熊が現われたとドキリとした朽木です。バスから降りて一団から離れて歩くと、それなりの山歩きの気分になれます。


出発して30分ほどで、9時には福ちゃん山荘に到着。登山道に並行してここまでは車道がありますが、せっかくの大菩薩、山歩きが目的ですから、そちらには足を向けません。車で運ぶためか、飲み物食べ物、特別に高いものではありません。おにぎり1個と冷えた桃を所望。桃は盥の中の水に浮んでおり、他の桃に触らぬようにと注意されて、好みのものを取ります。1個80円でした。

大菩薩峠ふくちゃん荘
登山道から上るとまずはこの表札が目に入ります。ふくちゃん荘の表玄関はこの奥に広くあります。ついうっかりと冷やしていた盥の桃に手を伸ばしたために、店番のお兄さんにやや大きな声で制止させられたのは愛嬌です。活きた魚と同じ、果物も触られると鮮度が落ちるのです。

大菩薩峠富士見荘
ふくちゃん荘からすぐの所にある富士見山荘は現在閉鎖になっているようです。冬場には開くのかどうかわかりません。庭の方に廻って見ましたが、天気がよくないので富士山は見えませんでした。



1時間ほど登ったでしょうか、まだ午前中のことですから下りてくる人と出会うのは少なく、同じ道を登る人も少し離れるとその姿は見えなくなります。大菩薩の源流はどこかとそんな想いで水の流れをみとめたりしながら進んでいると、突然に前方の高所に山小屋らしきものが見えてきました。介山荘と大きく書いてあります。

大菩薩峠清流

この沢の流れを突き詰めていけば、大菩薩の源流に辿り着くのかもしれません。

大菩薩峠石塔

介山荘から大菩薩嶺に向かうところに中里介山を顕彰する碑と石塔が立っており、その裏側から日川ダム湖を遠景に望んで撮ったものです。無学のために碑文の全部は読みとれませんでしたが、白井と読めるので御岳山の『大菩薩峠碑』と同じく友人の白井喬二が撰文したものらしいです。

大菩薩峠介山荘

介山荘の前に大菩薩峠の山頂記念碑が立っており、多くの人が、写真の取り合いっこしていました。その中の一人が「かいさんそう」「介、山荘」と読んでいたのにやや驚きましたが、これは実際、中里介山の名を取って「介山荘」としたのではなくて、「介、山荘」が正しいのかもしれないと考えたりもしました。

大菩薩峠頂上

海抜1897mとあります。近場の山歩き、大山、高尾山、御岳山、と登って見ましたが今まで一番高い標高です。

そこから先が、今回の山登りの主眼でした。小説『大菩薩峠』は机竜之介が峠の道を登って来た巡礼の老爺と少女の姿を見つけて、無惨に老爺を斬るところから始まります。どんな罪科もないはずの、ただ通りかかっただけの旅人を斬り捨てた、この厖大な大長編小説の41巻を費やしてもついに未完に終わるざるをえなかった、中里介山の折々の構想の端緒の一端でもどこか風景の中に発見できないかとの思いがあったのです。


大菩薩嶺
大菩薩嶺の稜線を望む。少し靄っていました。


大菩薩峠賽の河原
石ころだらけの賽の河原。賤心なく小石を拾って上に乗せてみました。

大菩薩峠能見社
能見の社は見つかりませんでしたが、武州と甲州の境界であるこの場所からは眼下の峠道を見下ろすことができます。


そこに、偶然にも老爺と若い孫娘のような二人連れを見かけたのでパチリ。

賽の河原からの帰りに大菩薩嶺の尾根から見下ろした、介山荘の全景です。
妙見の社の木の上から見ていた猿の眼になったような不思議な気持ちがしました。



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